霊峰白山をはじめ多くの山々に囲まれている石川県。実は、県土の7割を森林が占めているってご存知でしたか？森林は住宅や家具などに使う木材を育むだけでなく、良質な水を蓄え、土砂災害を防ぐとともに地球環境の保護や生物多様性の維持など、多くの役割を果たしています。

白山市鶴来大国町に本社を置き、石川県内の豊かな森林を守っているのが今回ご紹介する「なかの林業」です。代表を務めるのは、鶴来生まれ鶴来育ち、鶴来が大好きという地元愛に溢れた中野篤さん。20代の頃に知人から林業の紹介を受け、「聞いたこともなかったし、楽しそうだと思って」弟子入り。5年間、師匠のもとで経験を積んだのち、2007年に独立・開業しました。

様々な事業に全力で取り組む姿勢が周囲から信頼を集めて徐々に事業を拡大し、いまでは金沢、野々市、小松に営業所を置く、県内屈指の林業企業となっています。

数年前からスマート林業に取り組んでおり、ドローンやアプリなど最新技術を用いた林業は全国でもトップレベルで行政や他社が視察に訪れるほどだとか。ドローンで森林の材積を確認したり測量したりできるようになったことで、これまで手作業で行っていた労力・時間を大幅に削減。またパソコン上で解析を行うことで、その後の作業もスムーズになるなど働き方改革にもつながっています。

どんどん新しいことにチャレンジする「なかの林業」の現場は森のなかにとどまらず、インスタグラムやユーチューブ（チャンネル登録者数は約4,000人！）でも林業の魅力を発信しているというから驚きです。

現場に同行させていただき、舗装されていないでこぼこ道をぐんぐん進んでいくと、のびのびと生い茂る林のなかで「NAKARIN」のロゴが入った大型重機を発見しました。大きな音を立てて杉を伐採する様子に、はたらく車ファンでなくともテンションが上がります。

スマート林業に加えて、もう一つの特徴が、最新機能を搭載した重機を多く有していることです。現在従業員は14人いますが、全員が未経験からのスタート。入社して3年間ほどで林業に関する重機免許の取得や資格の習得などを行っています。

社員のなかには子どもがいる人もおり、過去には2人の男性社員が育児休業を取得した実績も。「あるとき部下から『子どもが生まれるので、しばらく現場に行けなくなるんですけど』って相談があったんです。それで、『だったら育休取ったら？』って提案したんです」と中野さん。また金沢林業大学校を卒業し、小学生の子どもを育てながら週4日現場で活躍する女性社員もいます。

「彼らのおかげで会社が続いているから、会社として、社員のためにできることはどんどんしていきたいんです」と中野さん。子どもの運動会や授業参観のために仕事を休む親も少なくありません。

「社長は本当に働き者です（笑）。四六時中働いているんじゃないのかな」と話すのは、高校教師を定年退職し、第二の人生として「なかの林業」を選んだ入社4年の久保さん。現在はドローン撮影やパソコンを用いた航空写真の解析などを行っており、「チームワークというよりも個人での仕事が多いので、自分のペースで働きやすいですよ」と言います。

大好きな鶴来に恩返しをしたいという思いから、年に数回、地元・朝日小学校で林業の出張授業を行ったり芝刈り機を寄贈したりと地域の子どもたちとの関わりを大切にしている中野さん。「子どもたちの素直な反応ってすごく嬉しくて」と笑顔を見せます。

「森林を適切に管理すれば、土砂崩れや汚水を防ぐことができる。荒れた山が僕たちの仕事によって綺麗になると、やっぱり達成感がありますよ」。

地元や自然への愛に溢れ、従業員たちから慕われている中野社長率いる「なかの林業」。石川の自然を守るというスケールの大きな仕事がここにはあります。