額装を通じて、アーティストを支える
額三額縁工房
今から30年前、鶴来では「ヤン・フートIN鶴来(鶴来現代美術祭)」という、現在では一般的となった地域のアートプロジェクトの先駆けとなるイベントが1991年、1994年の二度にわたって開催されていました。そんな、実はアーティストも注目する街としての一面を持つ鶴来に2021年、額装を手掛ける店舗兼工房「額三(がくぞう)」がオープンしました。
聞けば石川県内のアーティストや美術館だけでなく、首都圏の美術館やコレクターから依頼が来るほど厚い信頼を寄せられているとのこと。代表であり額装師として活動する三嶋公宏さんにお話を伺いました。
「額三」があるのは、鶴来のメインストリートに面した場所です。かつて建具店の工場だった建物をリノベーションしており、一歩足を踏み入れると想像以上に広々としていてスタイリッシュな空間が広がっています。ちなみに建物の中は、入り口側が工房、奥側が打ち合わせスペースという配置。三嶋さんは「外から中の様子が見えて、額縁を作っている場所だということがわかるようにしたかったんです」と話します。
石川県金沢市出身、子どもの頃から絵が好きで写生大会などのコンテストでは「金賞以外取らなかった」というので驚きです。空間やインテリアデザインに興味があったことから金城短期大学でアートを学び、卒業後は画材を扱う企業に就職して額縁製造部門で17年間経験を重ねました。
ちなみに「額装」と聞いても、読者の中にはピンとこない人もいるかも知れません。額装とは、絵画や写真、ポスターといった作品を額縁に収めること。「額三」では既製の額からフルオーダーまで幅広い選択肢のなかから作品と作品を飾る空間の両方に合った額を提案するだけでなく、現場に出向いて設営を行うこともあります。
アンテナを高く持ち、トレンドや流行の空間デザインなどはいつもチェックするようにしているという三嶋さん。「人と話すことが好き」とのことですが、初対面でも自然と会話に花が咲くようなコミュニケーションの心地良さがあり、依頼者のオーダーを細かくヒアリングして行う提案力に定評があるというのも納得です。「こんな額装をしたいという明確なイメージを持った人だけでなく、この作品を飾りたいけどどうしたら良いのかわからないという人にも気軽に訪れていただきたい」と話します。
パートタイマーの野口さんは武蔵野美術大学を卒業後、ウェブデザインの仕事をしていましたが、縁があって「額三」で働き始めることに。現在は主に額縁を作る業務を担当しています。
「石川県内でアートに直接関わることのできる仕事ってあまりないんです。ここではさまざまな作品に触れることができますし、時には美術館での仕事もあって、充実した日々を過ごしています。三嶋さんとの仕事でストレスを感じたことはありません。休みも融通が効きますし、納期もそれほどタイトではありません。黙々と作業することが苦でない人、作品を大切に扱うことのできる人、また『自分が作品を作る』くらい気概を持った人にはぴったりの職場です」と教えてくれました。
伝統工芸が根付いており、特に加賀友禅や沈金、九谷焼など色付けや絵付け文化が盛んな石川県は額装が求められる機会が多いのだそう。日々多くの依頼がありますが「自分がしているのは額装を通じて作家さんのお世話をすること。いわば一歩後ろの仕事です」。作品のクレジットに名前が乗ることこそありませんが「作家さんから『合作やね』と言われたときには嬉しかったですね」と三嶋さんは頬を緩めます。
最終的な目標は「アーティストとお客様や、アーティスト同士がつながる場所を作ること」。アーティストからの紹介で次の仕事につながることも少なくないそうで「自分がつないでもらっている恩があり、だからこそ、今度はそれをアーティストにお返ししたいという気持ちがあります。いずれはもう一店舗ギャラリー兼カフェのような場所を作って、工房の稼働率を上げると共に、つながる機会を増やしていきたいですね」と語ります。
開業にあたり、金沢市南部で物件を探していた三嶋さん。はじめに鶴来の物件を紹介されたときには「正直、戸惑いました(笑)」と振り返りますが、この地での仕事を通じて「街のことが好きになってきました。街の人がふらっときて、顔を出して、ちょっと話して帰っていく。そんな気軽なコミュニケーション、ご近所付き合いが心地良いですね」と言います。
2024年にはパーク獅子吼・スカイ獅子吼で定期開催しているイベント「おついたちマーケット」にも初参加。小ぶりな額やポスターや絵はがき、作品を額装したものを出品し、鶴来という街との結びつきを強めています。
現在「額三」では、正社員を募集しています。対象はアートやものづくりに興味がある人。美術・芸術学校の卒業者を優遇しますが、それ以外であっても「やる気やチャレンジ精神があれば育てます!」とのこと。
額縁の製造や販売、現場仕事まで幅広く経験することになりますが、一つお伝えしておきたいのが「大きいものだと100kg、幅1.2、3メートル×高さ4メートルの作品を4人で運ぶこともある」仕事だということ。丁寧な仕事ができ、かつ体力勝負の仕事もできる人を求めています。
「人を雇用する上で大切にしているのは、楽しく仕事をすること。だって、面白くないと続かないですよね」と三嶋さん。額装が仕上がったときのやりがいはもちろん、さまざまな作品に触れたり、アーティストと打ち合わせをしたりと、刺激にあふれた職場です。なかなか経験することのできない額装を通じて、石川県のアートを支えたい・盛り上げていきたいという気概を持った人は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
文:井上奈那(馬人舎) 撮影:山本哲朗(Photo Studio tetoru)
- 募集職種
- 製造・販売・企画
- 雇用形態
- 正社員(試用期間あり3ヶ月)
- 給与
- 月給160,000円〜
基本給・固定残業手当含む ※超過分追加支給あり - 待遇・福利厚生
- ・賞与(正社員のみ/年2回8月、12月)※会社業績によって変更の場合あり
・昇給年(正社員のみ/年1回)※会社業績によって変更の場合あり
・各種社会保険完備(正社員のみ)
・交通費あり
■労災保険(他加入保険は法定による)
■車通勤可(P有)
■試用3カ月(同条件)
- 勤務地
- 額三
石川県白山市鶴来本町4丁目チ102 - 仕事内容
- 額縁やその他の加工及び製造
美術館展示
商品の梱包作業
納品業務
*木工の加工や物づくりが好きな方、手先が器用な方
*体力に自信のある方、体を動かすのが好きな方 歓迎!
*額縁の知識がなくてもOK。
(製造から販売までの一連業務ができやりがいのある仕事です。 - 勤務時間
- ■9:00〜18:00
- 休日・休暇
- ■週休2日制(土日祝休み)
■GW休暇、夏季休暇、年末年始休暇あり - 求める人物像
- 30歳以下の方
若年層の長期勤続によるキャリア形成を図るため(例外事由3号 イ)
高卒以上 - 問い合わせ先
- 額三 担当 三嶋
電話 076-295-9023
FAX 076-295-9023
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