障がいのある人の居場所をつくる仕事
社会福祉法人獅子吼会障害福祉サービス事業
獅子吼高原のふもと、豊かな自然に囲まれた場所にある社会福祉法人「獅子吼会」。障がいのある方の日中活動を支援するため、就労の場を提供するほか、重度の障がいがある方も共にさまざまな活動を行い、社会生活を充実して送れるよう支援することを目的としています。
障がいの程度やニーズによって利用することのできる施設が白山市鶴来と野々市市にあり、就労継続支援B型、生活介護、短期入所、相談支援など複数の事業を展開していますが、今回は鶴来にある就労支援事業所「あじさい」と、「パーク獅子吼ふれあい館」内にある「7☆Cafe(ナナホシカフェ)」を訪問。ここで働く支援員に話を伺いました。
「獅子吼会」の前身である「あじさいの家」のはじまりは1997年。自身の息子が肢体不自由を伴う難病を患っており、「小学校へ入学するのも苦労した」という経験を持つ理事長の西道子さんが「息子や、息子のように障がいを持つ子どもたちが生きていくための場作りをしたい」と啓蒙活動を始め、同じような思いを持った保護者が集まって小規模作業所「あじさいの家」を立ち上げたことがきっかけでした。
「当時は障がい者の権利が守られておらず、我が子を受け入れる施設は親自身が立ち上げるような時代でした」と振り返る西さん。無認可からスタートした取り組みも、小規模作業所、障がい者施設、特定非営利活動(NPO)法人へと次第に行政からの認定を受け拡充し、2024年10月に社会福祉法人「獅子吼会」へ名称を変更。より公益性の高い地域拠点として歩み始めました。
「障がいのある方と生活をしているうちに、本人や保護者にとって必要なことがどんどん見えてきて、気付いたら事業が多角化していましたね。障がいのある方が『いない』ことにされてしまわないように、地域に居場所を作ることが必要なのだという気持ちでやってきました」と語ります。
就労支援事業所「あじさい」は、障がいのある方に就労やレクリエーションの場を提供し、働くよろこびや生きがいを生み出すと共に、地域の人たちとの交流や自立を目指し、充実した生活を送るための支援を目的とした施設です。
箱折りや木材製品の加工などを行ったりするほか、レクリエーションの時間には外部講師による書道教室や創作活動、カラオケなどをして楽しんでおり、施設内はいつも活気に満ちています。
「獅子吼会」で働き始めて13年ほどになるという池田美奈子さんは、サービス管理責任者として利用者一人ひとりに合わせた目標を設定し、個別の支援計画書に沿って他のスタッフと共に利用者を支援しています。福祉は「これまでまったく知らなかった世界」だったと言いますが、やりがいを訊ねると「ここに来たら、自然と笑顔になっている自分がいたんですよね」と一言。
「それこそ初めのうちは『どう接したら良いのかわからない』というレベルでしたが、利用者のみなさんと接するうちに、深く考える必要はないとわかりました。障がいの有無に関係なく、〇〇さんは〇〇さん。一人ひとりの個性、行動、様子、それぞれが多様で、関わっていると、とにかく楽しいんです。常識や固定概念で凝り固まっていた自分に気付き、利用者の皆さんの自由な生き方に触れて、考え方を柔軟にすることができました」と教えてくれました。
「誰でも得意なことや不得意なことはありますが、その差が大きくなると、いわゆる一般企業で働くことは難しくなります。適材適所という言葉がありますが、この施設の利用者の皆さんも、自分の特性に合ったことであれば力を存分に発揮することができる。つまり、その人のできる・できないは環境に依るところが大きいんですね。『あじさい』や『7☆Cafe』などの事業所でさまざまな作業を経験することにより、利用者の皆さんは新たな能力をたくさん習得します。その能力を必要とされる場所で存分に発揮する(必要とされるサービスを提供する)ことで、対価が生まれる。その対価は当然、給与にも反映されます。最終的には、自分でお金を稼ぐことができるという自信につなげてほしいんです」。
一人ひとりの目標に向かって日々活動に励む利用者の皆さん。「利用者の皆さんはどんどん変化していきますし、数年かけてできなかったことができるようになる、そんな様子を見るとこちらが元気をもらえますね」と池田さんは笑顔を見せてくれました。
一週間手間ひまをかけて作る「牛すじカレー」が自慢の「7☆Cafe」は、就労支援事務所(B型)として一般就労を目指す人たちが働いています。「パーク獅子吼ふれあい館」内の清掃や飲食店のホールスタッフ業務のほか、店舗で販売する水引アクセサリーなどの制作も行っています。カフェの管理や相談支援専門員を任されている谷上京香さんは「この仕事を始めて、福祉のイメージががらりと変わりました」と話します。
「最初の勤務地だった『らーめん虎』(以前は白山市鶴来水戸町にあり、現在は野々市市に移転)の利用者の皆さんのおかげで、今の私があると言っても過言ではありません。とにかく皆さんと一緒に仕事をすることが楽しい。1日1回は珍事件があって(笑)、笑いがあって、もちろん困ったこともあるけれど、それを上回るやりがいがあります。『福祉の仕事』と、難しいことを考えずに飛び込んでみてください。ぜひ自分でやってみて、この仕事の醍醐味を感じてほしいです!」と、持ち前のハツラツとした表情で教えてくれました。
利用者の皆さんのなかには仕事を覚えることに時間がかかる方や動きがゆっくりしている方などがいますが、各々異なるペースで働くことを尊重しています。以前、谷上さんは利用者の方から「私は覚えるのに時間がかかるけど、ちゃんと仕事ができるようになりたいから、できるようになるまで教えてください」と頼まれたと言います。その思いを受け止め、覚えられるようになるまで根気よく指導した谷上さん。あるとき「この職場では、私を一人の『働く人』として扱ってもらえて嬉しい」という言葉をもらい、「この仕事をしていて良かったと改めて思いました」と思い出を語ってくれました。
「ここは思いやりのある職場です。トラブルや口論などもありますが、みなさん、素直に自分の非を認めて謝ることができる。目の前の人とまっすぐに向き合い、余計な忖度がないんです。一般企業で他の人と同じように仕事ができなくて傷ついたり仕事ができなくなったりしてしまった人もいますが、働く訓練をするなかで、だんだんと明るい表情を見られるようになったときは嬉しいですね」と言います。
「獅子吼会」では現在、「あじさい」や「7☆Cafe」などで働く支援員を募集しています。谷上さんが「一口に福祉業界と言っても、利用者の皆さんの支援をはじめカフェ運営からアクセサリー作りまで仕事内容はさまざま。可能性は無限大にあります」と話すように、業務内容は多岐に渡ります。
仕事は土日祝日休みで、残業もほとんどないので、プライベートを大切にすることができるほか、必要な資格は働きながら取得したり、各種研修会に参加をして知識を習得したりする機会もあるので、特別な知識は必要ありません。「笑いが絶えず、和気あいあいとした職場ですが、一方では人命を預かる重要な仕事なので、責任感や使命感のある方に応募していただければと思います」とメッセージを送ります。
目指すのは、障がいのある方が自立して一人で生きていく力をつけること。そのために施設に通う利用者の皆さんをサポートし、一つでもできることを増やしていくのが支援員の仕事です。「私たちの役割は、利用者一人ひとりの人生のキャンバスを彩り豊かなものにすることです。何気ない、些細なことでも『ありがとう』と声をかけてもらうときに、喜びを感じます」と西道子さん。もちろん苦労や困りごともあると思いますが、ここで働くどの支援員に話しを聞いても「楽しくてやりがいがある」と、心からの笑顔を見せてくれたのが印象的でした。
文:井上奈那(馬人舎) 撮影:山本哲朗(Photo Studio tetoru)
- 募集職種
- 生活支援員
- 雇用形態
- 正社員
- 給与
- 183,000〜250,000円、各種手当込み
- 待遇・福利厚生
- ・通勤手当 実費支給(上限あり)
・昇給あり
・賞与あり(年2回)
・育児休業取得実績あり
・定年制あり(一律65歳)
・再雇用制度あり(上限70歳まで) - 勤務地
- ・野々市市扇が丘3番50号 多機能型事業所 椿
※白山市八幡町の勤務もありうる - 仕事内容
- 就労継続支援B型及び生活介護施設で障がいのある方の作業補助、生活支援。送迎業務あり(マイクロバスを運転可能な方歓迎)、男性利用者のトイレ介助があります。
<均等法除外同性介護のため、男性限定> - 勤務時間
- 8:00~17:00(休憩1時間)、第4土曜は8:00〜12:00
- 休日・休暇
- 週休二日制で日曜、祝日その他。お盆や年末年始休みあり。
※土曜日は第4土曜日のみ勤務となります
6カ月経過後の年次有給休暇日数10日 - 求める人物像
- 思いやりのある元気な方
- 問い合わせ先
- 社会福祉法人獅子吼会(担当:事務局長 西和紀)